1989年、「300年住宅」の名前が公のレポートに記載されたのは、このコンペが最初でした。職住接近の1,600戸の住宅をつくることが目的でした。
「強く永くもつ躯体」「取り替えやすい設備」「自由に変更できる空間」など「300年住宅の基本骨子が提案されています。当時の審査員からは「300年住宅は意味不明」として理解されませんでした。これがきっかけで「建物の長命化」は「まちづくり」と「シルバータウン」と共に当社基軸の三本柱のひとつになりました。

長命化とコストダウンしながら付加価値を上げるための技術=VACS(Value Added Cost Saving:バックス)の開発を行い、 それらをコンセプト共に紹介した書籍です。1995年に日経BP出版センターより刊行されました。専門家の意見としてバブル経済崩壊の対策を行うことを中心に、長命化への流れを実践の成果をまとめて報告しました。

前例がないと言われ続けてきた為、自社が事業主となって建設・供給した300年住宅の祈念すべき第1棟です。それまで開発してきた長命化の技術=SEFL(セフル)を全て採り入れました。SEFL(セフル)は造語で、安全(Safety)、省資源(Ecology)、自由性(Freedom)、長命化(Long Life)の4つのコンセプトが融合した技術体系のことです。アトリエ平和台では次のような技術が採用されています。

土を場外に出さないエコロジカルな基礎工法です。

 

一般的なアスファルト防水の上に、乾式の屋根を架構した二重の防水屋根をつくりました。下のアスファルト防水は紫外線や雨風による劣化から守られるので長くもちます。

 

集合住宅で外壁補修をする際に最も気をつけることの一つにタイル浮きや剥落があります。この問題を解決する為に、アトリエ平和台ではタイルの施工を「打ち込み工法」としました。タイルの裏足がコンクリートに食い込んでいる為、剥離しない構造になっています。打ち込みができる仮枠の開発から始めました。

 

住戸内の自由性を妨げている要因として天井の小梁があります。これを解決する為に、アトリエ平和台では、床スラブに「ワッフル工法」を採用しました。小さな小梁が縦横に組まれており、“多格子梁”とも呼びます。その結果、小梁が飛び出て邪魔になることはなく、天井はフラットになります。

 

排水管は住戸の外の共用廊下にあるパイプシャフトに設けられた共用竪管までポンプによって排水される仕組みを採用しました。ポンプアップによる排水方法により、共用竪管の更新を住戸内に入らずに行うことや室内の自由性を高めることが目的でした。

 

共用廊下の天井内に排水横引管や電線などが収められているので、これらの点検・修理ができるように、廊下の天井を簡単に開閉できる仕組みにしました。

 

300年住宅の第2棟。小さな敷地にワンフロアに1住戸、全5戸という小規模のマンションです。戸建てが縦に積み重なったイメージで、エレベータを降りると自分の住戸だけです。北側で大濠公園に面しているので、あえてバルコニーは北側につくり、景観を大切にしました。スパンも約9m×14m、バルコニーも4m×4mと約10帖もの大きな空間は半屋外の生活を楽しむことができます。

最初の書籍から約15年の間に技術開発した成果を書籍にまとめて、公開しました。帯の推薦文を法政大学の五十嵐敬喜先生に書いていただいたことを大変感謝しています。

デベロッパーや設備会社等が集まり、300年住宅の施工基準等を検討・策定し、品質の確保と普及を行う会を発起し継続して活動しています。当社が事務局をしています。

株式会社アームレポ
伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社
伊藤忠都市開発株式会社
株式会社 今林工務店
株式会社エストラスト
株式会社 九電工
九州建設株式会社
九州旅客鉄道株式会社
株式会社 佐電工
西部ガス株式会社
株式会社 親和電機
照栄建設株式会社
東急建設株式会社
東海興業株式会社
西日本鉄道株式会社
西鉄不動産株式会社
(株) 福永博建築研究所
株式会社 古屋工業所
ブリジストン化工品西日本株式会社
松尾建設株式会社
株式会社 吉川工務店
    (アイウエオ順)

より永く保つ技術の普及を目的とした政府の補助事業「長期優良住宅先導的モデル事業」に300年住宅が採択され、2012年2月に4棟全て223戸が完工しました。建物の耐久性を高める技術や更新・メンテナンスを容易にする仕組みが組み込まれています。レンガの腰壁や、外配管の仕組み、二重防水やオールサッシュ・トリプル壁など多くの技術を採用しています。詳細は「300年住宅の技術」のページを参照して下さい。

集合住宅=マンションを長命化させるために何か1つと問われると「外配管」が最も重要と答えます。長持ちさせる為にはメンテナンスしやすい設計・構造になっていることが大切です。これからも、永く保つ集合住宅を提案していきます。

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