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マンションに永く住むためには、共用部分の設備配管を全て定期的に更新することが重要です。生活インフラの配管は毎日の使用のなかで経年劣化していきます。一般的には鉄筋コンクリートの構造躯体よりも先に配管が寿命に達します。寿命に達した配管の取替ができれば、さらに永くマンションを使い続けられます。多くのマンションの共用排水管は、住戸内のトイレやキッチンの裏側に上下階を貫いて設置されている「内配管」方式がほとんどです。縦列に住む住民の合意を取り、室内に入り、壁や床を壊す工事の実現は現実的に非常に困難です。マンションを永く使うためには、共用配管の取替が住みながらでも容易に出来るように、配管を住戸の外に出した「外配管」方式が必要です。例えば50 年後に共用の設備配管を全て取替えることを目標にします。

 

 300 年住宅コンソーシアム型外配管」は、これまでの外配管の提案と比べて導入がしやすいように事業性を意識してPSプレートとボックスをつくりました。PS プレートは、300 ミリ×500 ミリのスペースに水道、ガス、電気、弱電、排水管、そして予備スペースがまとまるようにコンパクトに新しくつくりました。PSボックスは、取替の際には取り外し移動して工事スペースを確保できるようにしました。

 共用配管の取替を行いやすくした「外配管」システムの普及の妨げとなっていた横引勾配による床下増を、共用廊下とバルコニーの二方向に排水することにより、半分の高さ増で抑えるようにしました。横引き主管の中央を頂点として二方向に排水することで、床下ふところを260 ミリに抑えました。マンションの分譲事業では階高を抑えることが事業上重要となります。横引き排水管を主管と枝管に機能分けすることで無駄の少ない配管経路をとりました。また、変形C 型断面を組み合わせた「配管金物」をつくり、間仕切り壁の下に設置し主管を通すことで、これまで床下に任意に設けられていた排水管の位置がはっきりと把握できます。主管の真上の床は取替の際に開閉できるようにつくります。「台所の位置だけを変えたい」というような水回り位置の変更の際に枝管の位置の変更だけで簡単に対応できます。横引き主管の配置された上部の床材は、改め口として開閉できるようにし、専有部内の排管取替時に、床を壊さずに出来るようにしました。

 マンションに永く住むためには、修繕費用の中でも大きな割合を占める足場を架ける大規模修繕をなるべく長いサイクルになるように配慮しています。その為に、例えば50年間は足場を架けてメンテナンスが必要になる箇所をノーメンテナンスで済む技術開発をします。共用廊下とバルコニーのあるマンションの長手面は大規模修繕で足場を架ける際には全体のなかで大きな面積を占めます。この面をメンテナンスフリーにすることは修繕費用の節約になります。レンガは自然素材であり、腰壁の仕上げが吹き付け塗装やタイルの場合と比べて補修しなくても経年変化が“味”として美観を形成します。構造上はレンガの穴のなかに縦に亜鉛メッキを施した鉄筋を入れ補強します。

 アスファルト防水の保証期間は10~15 年程度とされています。そのために15~20年毎に張り替えを行っています。しかし実際には30年以上保っている事例が多数見られます。そこで防水を二重にすることで漏水の心配をせずに取替の期間を50年に延ばします。二重の防水層の間には通水と通気のための中空層を断熱材で挟みます。下の防水層は日射の紫外線と雨風にさらされることがないので劣化を免れ100 年間の防水効果を目標にしています。そして100 年目に取り替えます。上の防水層は50 年目に全面を張り替えます。上の層の傷んだ部分から漏水があったとしても、下の防水層で止水し通水層よりドレインにて排水でき、また目視で確認することができます。パラペットの立ち上がりには穴開きレンガを積み、通気を循環させて防水層を守ります。

 マンションに永く住むためには、長い期間における家族構成の変化や、所有者の変化、使用目的の変化に応じられるような間取り変更の自由性が求められます。これまで動かなかったバルコニー側の窓や小壁を間取りに合わせて自由に変更できるように、開口部の全面を柱から柱まで一体のサッシュでつくりました。これにより、間取りの自由性はさらに拡大します。当初は「2枚引違い窓・小壁・4枚引違い窓」でつくった開口部を、間取りの変更に合わせて「4枚引違い窓・小壁・2枚引違い窓」と変更したり、横長リビングへ変更する場合は小壁を端に寄せることも可能としました。組み替えるだけなので小壁のはつり工事も発生しません。

 開口の大きさには建築基準法により面積8 ㎡、幅4.8m までの制限があります。方立てで分断すると間取り変更の自由性を妨げるため、方立ての代わりにサッシュ枠に組み込まれたレール上を動くことの出来るアルミパネルを中に挟み「トリプルカベ」をつくります。室内部はふかし壁、室外部はサイディング板に給湯器・エアコンの室外機・スロップシンクを設置し小壁の代わりとします。

 敷地と公共の排水・電気・水・ガスをつなぐ出発・最終ポイントである道路境界際に人が入れる洞道をつくります。通常、管は地中に埋設してあるので、点検や取替の際は土を掘り起こして行います。洞道をつくることで配管・引き込み管を目視により点検でき、容易に清掃や取替ができます。人が入れる高さをつくり、点検ハッチは材料の搬入の出来るサイズにします。埋設管を更新する場合、既に仕上がっている地表面を破壊する必要がありますが、洞道があれば、地表面の仕上げを傷めることなく、設備配管を更新することが可能になります。

 マンションに永く住むためには、修繕費用の中でも大きな割合を占める足場を架ける大規模修繕を50年毎に行うようにします。その為に、50年間はノーメンテナンスで済む技術開発をします。従来は階層目地にはシーリングを施しています。しかし、シーリング材自体の経年劣化が概ね10~20 年で起きるために、打ち継ぎ部等からの浸水を防がなければなりません。今回は、ステンレスの止水板をコンクリートの中に打ち込みます。打設後、水切金物を取付け、バックアップ材を詰めてシーリングを打ちます。表面のシーリングが経年劣化しても、その裏にある止水構造により躯体を漏水から保護します。外壁面の足場架設サイクルを長くする効果があります。また、壁面の汚れ防止にも効果があります。

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